タマムシ科には日本にも多くの種類があるが、日本人が一般的に思い浮かべるのは、標準和名タマムシ(ヤマトタマムシ、学名 Chrysochroa fulgidissima だろう。細長い米型の甲虫で、全体に緑色の金属光沢があり、背中に虹のような赤と緑の縦じまが入り、とても美しい昆虫として好まれる。一説には、天敵である鳥の目を、日光を反射させることで目をくらませるためともいわれている。エノキやケヤキなどの広葉樹の上を昼に飛び(成虫の餌はケヤキなどニレ科植物の葉)、幼虫は枯れ木の材に潜り込み、それを餌として生活する。槇などの高所の新しい切り口に集まる。衰弱したナツメの幹の節目に産卵するため、タマムシが付くと木が枯れると思われることもあったようだ。
どのようにも解釈ができ、はっきりとしないものの例えを玉虫色というのはこの虫に因む。
玉虫(ヤマトタマムシ)の翅は、一見したところ緑色に見えるが光を当てる角度によって色彩が変化する。これは、タマムシの翅がもつ本来の色素の色が変化しているのではなくて、特定の波長の光同士が互いに強まったり、弱まったりすることで目に見える色が変化したものである。したがって、玉虫色とは、赤や青のように特定の色彩をさすものではなくて、刻々と変化していく色調をすべて含んだ色でなくてはならない。
法隆寺所蔵の玉虫厨子のように、タマムシ科の甲虫の羽は堅牢で色彩(干渉色)が美しいので、古くから調度品の装飾に使われていたがその翅の色は簡単に再現できるものではなかった。それでも、緑と紫の絹糸をそれぞれ縦糸と横糸に使って見る角度によって違う色が浮かび上がるような工夫で再現に挑んだ記録もある。
その美しさゆえに前翅[ぜんし]を工芸品に用いることもあり、法隆寺宝物「玉虫厨子」の装飾として使われている。
国宝「玉虫厨子」を当初の姿によみがえらせた「復刻版」と新たな「平成型」の2点が後に作成され、復刻版の台座部分には漆絵の仏画が描かれ、透かし彫り金具下にタマムシの羽約6600枚が敷かれている。
平成型は高蒔絵(まきえ)の技法などを施した芸術品で、タマムシの羽約3万6000枚を使った。
面白い種類として、ナガヒラタタマムシ属の甲虫の幼虫は、火災で燃え落ちた樹木の中だけで生育する。このため、メスの成虫は50kmもの遠方から森林火災を探知して産卵のために飛来する。
玉虫の玉はギョクのことで 宝石や貴石の意味がある。タンスに入れておくと「着物が増える」「着物に虫がつかない」などの言い伝えがある。
また、持っていると「幸せになる」「女性は恋がかなう」などや「魅了効果」があるとされ白粉入れなどに入れておくこともあったようだ。
本作品では、<白粉に玉虫>の言い伝えをモチーフに銀で制作、白粉とタマムシの翅やボディーを七宝で表現した。タマムシはとても魅力的な昆虫で是非チタンで構造色を表現してみたい。